See youの展示がお店のギャラリーにて行われました。今回は絵本を作られたしのさんとプロダクトデザインをされているyuki takeuchiさんのおふたりで活動をされているSee you。
発表の場であると同時にみんながあつまる場でもある、生活の延長にあるようなおふたりの展示についてお伺いしました。

- 簡単な自己紹介と普段の活動などお願いします。

しのさん:しのです。今は和菓子屋さんに勤めていて、師匠がいて、弟子のような立場でどら焼きや苺大福などの和菓子を作っています。今回は絵本を展示しています。展示は学生以来なので久しぶりです。

yuki takeuchiさん:タケウチユウキです。普段はメーカーでプロダクトのデザインをしています。休日に趣味で好きなものを作っています。

-展示に至った経緯をおうかがいできますか?

しのさん:私は作りたい気持ちはあるものの作れていなかったんです。そこで、なにか締め切りというか場所を設けたいなと思いました。作らないといけない状況に追い込んだほうがいいかなという話になって展示会をしようと考えました。お互いの名前をとって「see you」という名前にしました。
「see you」には「またね」という意味がありますが、友達を呼んで集まれる場所、2人で続けていくことによっていろんな人が集まって「じゃあまた来年」と言える場所になればいいなと思っています。

-今回の展示のテーマやコンセプトを教えてください。

しのさん:今回小さくですけど、「1.屋上で」というサブタイトルをつけています。あまり重要視はしていないのですが、ユウさんの作品が空がテーマだったこともありますし、私自身も誰かのためにつくるもの思いを馳せる場所として、また、see youの由来が集まる場所なので、それならどこで集まるかということを決めようと思い、今回は屋上ということにしました。

-各々の作品を作られていて、しのさんは絵本を作られていますね。

しのさん:3冊の絵本は大学の卒業制作で出したもので、新作として今回小さい本を出してています。「逃げる」ことに寄り添う出版社を作りました。卒業制作の時に作った絵本3作は「ひきこもり」をテーマにしています。私自身が高校時代にひきこもり生活を送っていて、その時に何をして欲しかったかというと、促したり外に出る選択ではなく、ただそばにいてほしかっただけだなと思いました。とはいえ、「そばにいる」ためには理解が必要だと思うので、支援者の方やカウンセラーの方にインタビューをしました。インタビューをしたり事例を調べていくうちに、ひきこもりの人には親とのコミュニケーションが一番大事で、12歳から発症する子どもが8割を占めているということが分かりました。じゃあ、12歳までに親とのコミュニケーションが円滑に取れている環境を作れたらな、と思ったんです。誰しも「ひきこもり」になりうる要素をもっているので、親が少しでも理解をしておくと無理やり引き出したりということがなくなるんじゃないかなと思い、コミュニケーションのツールとして絵本を出版しようということになりました。

-ひきこもりになってからではなく、それまでの前知識・理解の糸口としての絵本なんですね。絵本の対象はひきこもりの人ですか?その周りの人ですか?

しのさん:どっちにもです。絵本を読む年代の頃に親子で読んでもらうことで、理解が深まるんじゃないかと思って作りました。
子どもたちの世界観を伝えるため、支援者の方や(自分の)体験を含めて物語を考えて、それを対象年齢の子どもたちに読み聞かせをして描いてもらった、浮かんだ絵を基にしています。
例えば、ヤドカリの男の子が出てくる絵本があるんですけど、ヤドカリの色は青色が多いなとか、お母さんとこういう距離感で寄り添っているんだなとか、女の子の歌声って黄色いんだなとか、子どもたちの絵から見える世界観に寄り添った絵コンテのようなものを作って、イラストレーターさんに頼んで、絵をひとつに統一してもらいました。

-実際に出版はされてるんですか?

しのさん:卒業制作で本屋さんを作って、そこだけで販売していました。
今回の新しい作品は「ひきこもり」がテーマではなく、「働いていない人」その周りの人を対象としています。
まずつらい気持ちがあって、そこで話を聞いて物語を考えて、今度は同世代の人、20歳以上の人たちに読み聞かせをして、絵を描いてもらい編集しました。
他3作と制作のプロセスは一緒なんですけど、対象年齢がぐんと上がった感じになります。ですので、今回はそばに置いておける静かな詩集のような装丁にしようと、大きさや線の雰囲気は自分で考えデザインしました。

-yukiさんは今回時計を展示されていますが、普段は他のものも作ってらっしゃるんですか?

yukiさん:そうですね。作るのは家具や雑貨が中心で、時計を作ったのは今回が初めてです。

-時計はどのように作られているんですか?

yukiさん:時計のムーブメントはそのまま使っていて、外側を作っている感じです。針の塗装などはしていますが、形はいじっていません。

-今回の作品は空をテーマにされているとか?

yukiさん:もともと空が好きで一番きれいなものだなと思っているんですけど、社会人になって日中ずっとパソコンに向き合っている生活で、空が恋しくなったので空をテーマにしようと決めました。「空」というところから時間の流れを連想して、時計をつくりました。青空の時間が一番外に出られない時間だったので、青の綺麗さをだすために青い糸を巻いて青空を表現した時計を作りました。静かなイメージにしたかったので文字盤の数字を全部外してエンボスでの表現にしたり、針の色もグレーにしました。
最初は空を見上げる感覚で壁掛けにしようかなと思っていたんですけど、壁掛けの時計を見上げることができるなら空を見られる、と思いやめました。仕事をしているときに自然に目に入る時計にしたかったんです。

-しのさんと一緒に作品を作られることはありますか?

yukiさん:学生時代は一緒にコンペに出したりしていましたが、社会人になってからは合わせるのが難しいですね。それに個人的に仕事でデザインをしていて、仕事ではお客さんや会社の作りたいものを作っているので、自分の制作では自分のやりたいことを全部出したいから、バラバラでやるのが今は一番いいかなと。どちらかというとアートに近いというか、デザインという感覚ではないです。

-yukiさんのつくられるもののモチーフは一貫しているんですか?

yukiさん:あんまりテーマを固めることはしなくて、その時一番興味があるものを作っていこうというのがルールですね。なのでテーマ的には共通点はないんですけど、周りからは僕が作ったとわかるという風に言われます。

-今後の予定や目標を教えてください。

しのさん:決まっている予定はないですが、年に1度くらいはこういう機会を設けていきたいなとは考えています。


しの
1994年生まれ
京都造形芸術大学空間デザイン学科卒業
和菓子職人の弟子

yuki takeuchi
1994年生まれ
大阪芸術大学プロダクトデザインコース卒業
インハウスデザイナー
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