3月7日(木)~12日(火)でお店のギャラリーにて行われていたヒサモトタカトさんによる展示「カナブンのブン子」。タイトルから気になる絵本をはじめ、ペインティングに立体、架空のお土産にJAMで制作されたZINEなどなど。多岐にわたる作品を生み出す発想についておうかがいしました。

-まずは自己紹介と普段の活動を教えてください。

ヒサモトタカトです。普段は駄洒落などのギャグ的なものから作品を制作しています。全体的なテーマとして「笑えるもの」を目指していて、その中でもナンセンスなもの、不条理なもの、シュールといわれるようなものを作ろうとしています。大学院では「ナンセンスユーモア」を研究テーマにしていました。

-「ナンセンスユーモア」の解釈をおうかがいできますか。

ナンセンスもユーモアも言葉自体にたくさんの意味があって、ナンセンスの方は皮肉がキツイものもあれば、「バカドリル」みたいなギャグがめちゃくちゃ詰め込まれているものも一通りにくくられていて難しい。自分なりの解釈ではギャグ要素があって、悲劇的なことを喜劇に変えているみたいな、ギャグ漫画でいうと、人が死んでも次の回ではけろっと生き返っているみたいな。リアルで起きると恐ろしいけど、それが普通に笑いになっているみたいなのが1つあるんじゃないかなと考えています。

-制作を始めたきっかけをお願いします。

もともとお笑いやギャグみたいなものが好きで、高校のころ友達にYOUTUBEにあがっていた谷口崇さんの「シュールアニメ」みたいなものを見せられて、よくわからないけど面白いなと思いました。それで自分自身ダジャレなんかをよく言っていたので、その辺と組み合わせてものをつくってみたりしていました。作品として作り始めたのは大学に入ってからですが、友達に見せようと落書きをたくさん書いていたりしていた最初の頃からあまり変わっていないですね。

-表現技法が多岐に渡っていますが、ギャグを思いついてから選択されるんですか?

タイトルやコンセプトを思いついてから技法を考える時もありますが、最近はその時やっている技法、ゴム版とか木版とかから思いついたりもしています。

-ゴム版はどうして?

大学院がデザイン科なんですが、デザイン科の授業はコンセプトがあって何を伝えるかを元に狭めていくように感じるんですけど、絵画の先生に話を聞きに行った際に、絵画の場合はモダンテクニックとか色々な技法を試して、作りながらどんどん広がっていくような感じを受けて、それがおもしろいなと思い、色々な技法をやってみようという気持ちになりました。で、圧倒的にゴム版が安かった。1枚60円くらいだったし、家でも出来る。もともと版画の風合いも好きだったというのもありました。

-版の風合いということで・・・ JAMを使ってZINEを作ってくださってますよね?

たぬきの絵本を作った時もストーリー的に懐かしい感じのものだったので、印刷はオンデマンドだったのですが、版画を使ったんです。それでせっかくならもっと版の風合いを利用したものをつくりたいなと思っていたら、友達がいいところがあるよと教えてくれました。質感もめちゃくちゃいいし、紙もいい。自分自身丁寧にきちんと作るのが苦手なので、ズレとかムラがあって1つ1つ違うのも自分の作品のテイストとも合っていていいなと思いました。自分の作品もズレが笑いを起してるみたいなものもあるし、全体的なテーマ的にも繋がっていると思って、そこからずっと使っています。上手いこと言えたきがする・・・。

-作品はどうやって発想されますか?

作り始めた頃は突然浮かんでいたんですけど、だんだんそれが出来なくなって、何作ったらいいんやろう?みたいなのが増えてきました。駄洒落をボーンと思いついたからやってみようというのもあるし、「カナブンのブン子」なんかは見た夢が元になっています。あとはメモしたり本を読んだりとか、考えて発想するようにしています。作品のテーマが皮肉というか純粋なギャグというよりモヤっとした自分の不満みたいなものが入っていると思うので、問題意識が源泉にないといけないな、枯渇するなと思うようになりました。ちゃんと勉強しとかないとできないなと。

-今回の展示作品から抜粋して、具体的に発想の経緯みたいなものをお聞かせください。

「カナブンのブン子」は見た夢が元になっています。ちょうど半分の見開き部分、カナブンが飛んでいってしまうところまでは夢で見たんです。自分が大きいカナブンを飼っていて、色々あって飛んでいっちゃってワーーーッ!と叫ぶ、みたいなところで起きて。その時点でおもしろいなと思ったんです。・・・なんでカナブンで「ブン子」なん、「カナ子」やないんや。とか。

-そこなんですね(笑

夢の中では当たり前だったんですけど、起きたら意味がわからないし。すぐにメモして、でもその時はそこから続きを思いつかなくて、1年経ったんです。で、突然去年の秋ごろ、自分が「カナブン」と「コガネムシ」を勘違いしていたことに気づいたんです。たぬきの絵本にしても、信楽焼の狸と生物の狸、アライグマと狸の違いといった認識のズレとか人々の思い込みとかを扱っていて、それがカナブンとコガネムシにもあって、使えるなと。そこからストーリーが広がっていきました。あとはそこにナンセンスユーモアの悲劇を喜劇に変えるような部分が必要かなと取り入れていって完成しました。ぶっとんでるストーリーだけれど、普遍的な部分を織り交ぜたものになっています。

-今回の展示のコンセプトとテーマをお聞かせ願えますか。

先月完成した卒業制作が「カナブンのブン子」という絵本で、その表紙ではなく、開いた最初の題字のページ部分をDMに使っています。そっちのほうが内容がわからなくて気になっていいかなと思ったのでそのままタイトルにもしました。絵本は一応最新作なのでメインはメインなのですが、別に今回一番大きく扱いたかったというわけではなく、単にDMとして見たときに一番気になるものにしてみただけです。展示半分は共感性の高い絵本の「カナブンのブン子」で、もう半分は何も考えずに描いて後からタイトルをつけたようなポロッとだしたような作品を集めています。加工食品と生鮮食品みたいな感じですね。生鮮食品の方は後から見たら「髪の毛」ネタが多いなと思いました。あとは、「伸びてるもの」とか「鳩」が良く出てくる。意外とモチーフが繋がってましたね。

-今後の予定や目標をお聞かせください。

学校を卒業したところなので、今回で展示は一旦一区切りです。ルミネとか・・・同世代や若い人が集まる商業ビルなんかで展示をして、カジュアルに見てもらいたいと思っています。まず笑って欲しい。そして褒められたいですね。


ヒサモトタカト

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