11月11日から11月23日まで開催されたさとうはなさんの『糸おしい日々』展。カラフルな線や糸を纏ったキャンバス、「時間の流れ」を可視化した糸たちが舞う今回の展示。この時代だからこそ向き合える作品づくりと、エネルギッシュなさとうさんの手仕事に触れられるステキな機会でした。今回出展していた作品や今後の活動についてお話を伺いました。

-自己紹介と普段の活動を教えてください。

はじめまして、さとうはなです。

1999年大阪生まれ。京都芸術大学 総合造形コースに在学しながら、JAM大阪のお店でアルバイトをしています。

ありふれた日々の中の些細な変化や気づき・疑問をきっかけに、主に糸や生地などの繊維素材を用いて平面・立体作品、プロダクト、形にとらわれない制作を行なっています。

-今回の展示のタイトルの由来やコンセプトをお教え願います。

ありふれた日々の中にはいいことも、やなことも、同じだけあるけれど、目をそらさず向き合うことで見えてくるものがきっとある。そんな想いを込めて、わたしは手を動かします。

展示タイトルの「糸おしい日々」は、”愛おしい”と”糸”をかけています。わたしが見ている等身大の日々を、糸をつかって様々なかたちで表現していて、作品を通して向き合うことで、さまざまな物事も愛おしく思えたらという気持ちを込めています。

個展期間中、沢山の方にお越しいただいて、これこそがわたしにとって最大の愛おしい日々だなと思いました!

-My own colorsの制作の様子を教えてください。また、ステキな人物たちと色の組合せですが、デザインはどんなときに閃いたのですか?

My own colorsは私が就職活動のときに感じた、色の統一を強いられる状況の中からインスピレーションを受けています。日本人は黒髪じゃなきゃいけないという、古く固い常識に歯向かって、一人一人違った”色”という個性を堂々と纏った人たちをシルクスクリーンとミシンドローイングで表現しました。

デザインは特にモデルが居るわけではなく、こんな人おりそうやな〜ぐらいのラフなイメージで描いてます。色の組み合わせも、表情にあったその人らしい色を、あまり考えすぎず直感で選んでいます。ちょっと自分に似てる!あの人に似てる!とか、誰かと重ねて見てもらえたら嬉しいです。

-「描く・刷る・縫う」と工程がいくつかありますが、それぞれの作業で工夫したことや気づきがあれば教えてください。

最初に浮かんだその人のイメージを、維持することを意識していました。ルーズリーフいっぱいに細いボールペンで、人の顔をスケッチをしていくのですが、その時点でその人らしさみたいなものは見つけていて。その後の工程が変わっていく中でも、最初に感じたその人らしさはブレないように、描いて、刷って、縫っていました!

-One stitch, One minute seriesについて伺います。時間の流れを可視化しようと思ったきっかけはなんですか?

本当にすごくシンプルです。いつものようにミシンで縫い物をしている時に、ふとミシンで縫うという行為そのものを観察してみました。一定の間隔で針を落とし、その後ろに一定の間隔で縫い目が続いている。その様子が時間そのものを刻んでいるように見えて、それと同時に時間は絶えず一定に流れているということを改めて実感しました。その発見をきっかけに、周りの環境や体感によって変化する曖昧な時間というものを、ミシンの縫い目を使って明確に可視化しようと思い立って、すぐ制作に移りました。

今回の個展では”携帯を見ている時間”を対象として制作を行なったのですが、他にも睡眠時間とか、通学時間とか、音楽のプレイリストの時間とか、時間の対象を変化させながら制作を続けていけたらなと思っています。

-ミシンドローイングの下にあるアクティビティ表示にはどんな意味がありますか?

ミシンドローイングは、生地を縫い合わせるという目的で造られたミシンを、線を描く道具として扱っています。その他にも、ブルーシートや口紅、古い雑誌などを素材として扱ったりしていて、生活にあふれている”もの”の見方を改めるというポリシーが一貫してあります。

固定概念に縛られず、あらゆる角度から自由に観察して、自分なりの見方でその”もの”の新たな可能性や、価値を見出していくことに面白さを感じています。

-さとうさんにとって「時間の流れが早いな」と感じるときはどんなときですか?

やっぱり作品制作に没頭している時は、時間の流れが早いですね!というか時間の流れを全く感じなくなります!制作は夜から始めることが多いのですが、気が付いたら外が明るくなっていることが日常茶飯事です(笑)

-Re:Yellowについて伺います。このご時世、いろんな「ロス」があるとおもうのですが、「ロスフラワー」の現状と、それに対してさとうさんが今後やっていきたい活動などあれば教えてください。

ロスフラワーとは多くの式典やイベントが自粛される中で、花の需要が急激に落ち込み、廃棄されてしまう花のことです。大切に育てられた沢山の花が、誰の目にも触れられず行き場を失っています。

Re:Yellowはロスフラワーの価値の再生と、この社会問題の周知を目的としているのですが、今回はエコバックという実用的なものを制作したことで、興味を持ってもらいやすかったように感じています。

今後はRe:Yellowをシリーズ化し、洋服やアクセサリーなどにも発展させて、ひとつの大きなプロジェクトとして進めていけたらいいなと思います。

-エコバックは制作工程の動画とともに展示されていますが、とてもこだわってつくっておられますね!いろんなスモッキングめちゃくちゃ可愛いです〇染めたり縫ったり、すべて手作りですか?

ありがとうございます、嬉しいです◎

もちろんすべて手作業です!ひとつひとつ、丁寧に、時間をかけてつくっています。特にスモッキング部分は、完成させるのに4時間ぐらいかかるものもあります。最初はただの布地だったのが、時間をかけて糸で紡いでいくことで模様が浮き上がり、伸縮性が生まれる。ほんとに魔法みたいな技法だなと、、もっと追求していきたいです。

-形にとらわれない制作を行っていらっしゃいますが、これから挑戦してみたいモノづくりはありますか?

今回の個展で、DMをつかった参加型の展示をはじめて企画してみて、自分の想像を超えて完成されていく様子が、いつもの作品制作とはまた違った達成感を味わうことが出来ました。なので、ひとりで完結するのではなく、もっと沢山の人を巻き込んで、なにか作り上げてみたいなと思いました。そのなにかはこれから考えます、、(笑)

-最後になりましたが、さとうさんは現在大学在学中とのこと、今後の予定や目標もぜひお聞かせください。

次の展示は、2月にある大学の卒業制作展になります。わたしが大学にきた意味を証明する、最後のチャンスです。

個展に来てくださった方々からたくさんのパワーを頂いたので、やる気で満ちあふれています!!!最後まで全力で走り切りますので、大学生さとうはなの集大成をぜひ見にきてください◎


さとうはな

1999年大阪生まれ。JAMアルバイトスタッフ。
京都芸術大学 美術工芸学科 総合造形コース 在学中。
好きなものトマト、嫌いなものパスタと冬。

何気ない生活をテーマに、糸や生地などの繊維素材を用いて、平面図・立体作品、プロダクト、形にとらわれない制作を行う。

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