レトロ印刷の特徴のひとつに「版ズレ」があります。
リソグラフ印刷という印刷手法の特性上、印刷位置が安定せず、
ランダムに印刷位置がずれてしまいます。

版同士がズレて、昔の印刷のようなレトロな仕上がりがカワイイ♡と
言っていただけることもあるのですが、
ズレによる弊害も多いので、デザインによっては注意が必要です。


「フチあり印刷」と「裁ち落とし印刷」


レトロ印刷には「フチあり印刷」「断ち落とし印刷」の2種類の規格があります。

1.フチあり印刷

フチあり印刷」は印刷不可な範囲も含めて用紙サイズ(A3またはB4)を最大限に使用し、四方を裁ち落とさずに仕上げます。

A3またはB4サイズを基準に、半裁(A4またはB5)、
さらに半裁(A5またはB6)するなどして、定型サイズに仕上げます。

2.裁ち落とし印刷

断ち落とし印刷」は仕上がりサイズのトンボ(断裁用の目印)を
レイアウトの周囲につけ、印刷後トンボ位置で断裁をして
指定のサイズに仕上げます。
ポストカードや名刺などの厚紙印刷も、「フチありA3」規格以外は全て裁ち落とし仕上げです。

トンボを含めて印刷する必要があるため、
A3またはB4サイズから取れる丁数が減るのと、
四方を断裁する作業が発生するため、フチあり印刷よりも多少割高ですが、
紙端まで印刷が可能となったり、定形外の自由なサイズに仕上げられたりという利点があります。

※複数面付けによるトンボ印刷は規範設定があり、お客様による複数種面付はできません

裁ち落とし印刷と版ズレ


この裁ち落とし印刷で注意が必要なのが、先ほどご紹介した「版ズレ」です。
印刷後、トンボを基準に断裁をしますが、
印刷位置がランダムにズレているので、トンボの位置通りに断裁をしても
紙ごとにずれ方が異なるため、全てを同じ位置で切ることができません。

版ズレは最大で3mmほど起こる可能性があります。
片面印刷で版同士が3mmズレることはほぼありませんが、
例えば両面印刷の場合、オモテ面が右に1.5mm、ウラ面も右に1.5mmズレていると
断裁したときに表裏で合計3mmのズレが起きてしまいます。
基本的にはオモテ面側のトンボを基準に断裁しますが、
表裏がズレた状態で断裁をすると、オモテ面から見るとさほど気にならなくても、ウラ面からみるとずいぶん位置がズレていることになってしまいます。

特に断裁位置に近いデザインは、最悪の場合切れて仕上がってしまうため、
断裁位置から内側3mmの範囲は「断裁の安全圏外」と呼んでいます。


断裁の安全圏とは


レトロ印刷では原稿作成用のテンプレートをご用意していますが、
赤いラインが仕上がり位置(つまり断裁位置)であるのに対し、
緑色の点線部分が安全圏ラインとなります。
仕上がり位置から3mm内側にあるので、この緑の点線より内側にあるデザインは切れません。
切れては困るデザインは、必ずこの緑の点線より内側に収めて作成してください。

安全圏ラインより内側であれば切れてしまうことはありませんが、
ラインギリギリの位置に配置すると、余白がなくなってしまい
とても窮屈な仕上がりとなる可能性もあるので、
少しゆとりをもってレイアウトするのがオススメです。


ズレの目立つレイアウトとは


ではここで、断裁時にズレの目立ちやすいレイアウトをご紹介します。

1.枠のあるデザイン

レイアウトの周囲に枠のあるデザインは、
印刷のズレにより枠の幅が不均等になり、印刷のズレがとても目立ちます。
例えば枠の幅が3mmの場合、1mmズレると片側が2mm、もう片側が4mmと
倍の太さになってしまいます。
特に表裏ともに枠のあるデザインは要注意!
枠の幅をなるべく太くとると、相対的に目立ちにくくなるのでオススメです。

また、周囲に均等な幅の余白があるデザインも、
同様にズレが目立ちやすくなります。

余白の幅を太くすると、ズレが目立ちにくくなるのでオススメです。

デザインが断裁位置に沿っていると、ズレが目立ちます。
ちょっと断裁位置から離して、ゆとりをもたせてレイアウトしてみましょう。

2.センター配置のデザイン

ど真ん中に配置したデザインは、ズレたときに左右の余白幅が不均等であることが目立ちます。

はじめからセンターをずらしたデザインにしたほうが、
ズレていることが目立たずオススメです。

3.あえて断ち切り位置ギリギリのデザイン

紙端ピッタリにデザインを配置したいという場合、ズレが起こるため
デザインがえぐれたり、余白ができてしまったりする可能性があります。

えぐれてしまっても問題がないよう、大きめ・太めなデザインにしたり、
余白ができないよう塗り足しを作っておくことをオススメします。

4.ピッタリとなり合ったデザインの追加断裁

例えば2つのレイアウトを並べて印刷後、オプションの追加断裁
2つに分割して仕上げる場合、ピッタリの位置では断裁が難しいため、
片方のデザインがとなりにはみ出てしまう可能性があります。

となりにはみ出ても問題のないデザインにするか、
断裁位置にはデザインがない状態にしていただくことをオススメします。

版ズレは回避のできない特性のため、いろいろと制限ができてしまいますが
デザインを工夫して上手く付き合っていただけたら嬉しいです!

レトロ印刷は、リソグラフ(デジタル孔版印刷機)での印刷を専門とする印刷所です。『印刷のタネ』ではレトロ印刷の入稿のコツや使い方を、『JAMLAB』ではリソグラフやシルクスクリーンを使った実験や遊び方を紹介しています。

レトロ印刷
https://retroinsatsu.com/
06-6485-2602(10:00~19:00)