デジタルでイラストを描かれる方の中には、トーンを使用される方もいらっしゃるのではないでしょうか? レトロ印刷のご注文でも多々見かけます。 特に、グラデーションを使用したデザインや、漫画で使用される方が多いですね!

現在JAMで販売している印刷見本に収録されているカラーチャートは、グレースケールで濃度調整をしたベタ塗りの見本のみで、トーンの仕上がり見本はありません。 ということで、今回はトーンについて実験的に印刷していってみようと思います!

※今回はレトロ印刷の原稿の作り方やトーンについてある程度、理解がある前提で話を進めます。 線数や濃度、角度についての細かい説明は省きますのでご容赦を!

印刷用のデータを準備

濃度10%刻み

今回実験で使用するデータはこちら。
トーン部分はPhotoshopのハーフトーンで作成しています。
(解像度:600dpi、角度:45度、網点形状:円)
線数はよく使用される60線に加え、40線・50線、70線・80線を準備しました。
濃度は10%刻みです。
(Web上にアップロードすると違いが分かりにくいですね…)

印刷してみる

わら半紙×黒
わら半紙×黒(拡大)
わら半紙×黒(拡大)

よく使用されるわら半紙に、黒インクで印刷してみました。
レトロ印刷は紙に直接インクを染み込ませて印刷するため、細かいデザインはインクの滲みやカスレにより潰れた仕上がりになる場合があります。
80線になってくると、オフセット印刷同様、ほぼグレースケールと同じような仕上がりになる印象です。

レトロ紙×黒
わら半紙のレトロ紙の比較
わら半紙×黄

用紙とインク選びの注意点は通常のレトロ印刷と同様です。
●用紙
表面がザラザラした用紙はインクが均一に乗りにくいため、カスレが発生します。画像は、一番カスレやすいレトロ紙-Aに印刷したもの。ベタ部分は、わら半紙で印刷した時よりカスレやすくなります。
●明るいインク
黄インクなど発色の明るいインクは用紙の色と馴染んでしまい、特に細い線や白抜き部分は見えづらい仕上がりになります。トーンを使用したデータの場合も、濃淡差の表現はできまずが、近い濃淡差は馴染んでしまいます。
こちらは好みに合わせてご利用くださいね!

モアレの発生条件

個人的にモアレは愛しいと感じちゃうタイプなので、自分で作成する印刷物では意図的に発生させることがあるのですが、発生させずに綺麗に印刷したい!という場合ももちろんあります。
モアレが発生する条件は、通常のオフセット印刷と同様です。

線数、角度の異なるトーンが重なっている

線数が異なる
角度が異なる

トーンを重ねて使用する際に、線数や角度が異なるトーンが重なっていると発生します。線数や角度は合わせて作成しましょう。

アンチエイリアスがかかっている

アンチエイリアスとは、二値化(黒と白の2色)ではなく、トーンの輪郭に濃淡が付いた状態。滑らかに見えるように拡大縮小をした場合や、カラーモードでハーフトーン化する場合にも発生する場合があるので、保存する際は設定に注意しましょう。

濃度の低いトーン

インク:黒
インク:若葉

印刷される濃度は原稿上の黒濃度に比例します。グレースケール部分の仕上がりも、K(黒)100%のデータはインク本来の濃いフラットなベタな発色、K(黒)濃度の低い部分は網点となって印刷されます。
濃度の低いトーンは、ベタの場合でも網点となって印刷されてしまうので、原稿自体のトーン部分と干渉を起こし、網点となります(二値化されたトーンの背景に濃度の低いベタがあっても同様です)。
例えば、「若葉50%の濃度が好みだから、50%で原稿を作ろう」としても、モアレが発生してしまうので、要注意です。

形が変形している

解像度による変形

トーンの形状は正円に近いほど、綺麗に印刷されます。原稿を作成した後に、拡大・縮小・回転させる際はご注意ください!
より精細な仕上がりを希望する場合は、600dpiでのご入稿をオススメします。350dpiだとデータを作成した時点でトーン部分が潰れてしまい、モアレっぽく印刷されてしまう場合があります。

(補足)以前まで、ご入稿データの解像度は「300~350dpi」を推奨していました。これは、レトロ印刷で使用しているリソグラフで出力できる解像度が300dpiまでだったため、高解像度のデータでご入稿されても、再現できなかったためです。しかしながら!機械もどんどん進化していっています。現在は、600dpiまで処理できるようになりました。

せっかく綺麗な原稿作成を心がけていても、保存する際の設定で気付かないうちにやってしまうミスも多いので、保存する際はもう1度、設定を見直しましょう。

まとめ

レトロ印刷は紙やデザイン(印刷面積)によって仕上がりが変わってしまうため、実際に印刷してみないと分からない、ということが多くあります。そのため、断言はできませんがトーンを使用される場合は以下を目安に作成してみてください!

●80線以上は潰れてしまいがち
●モアレを避けるためには、二値化された正円に近いデータを準備
●綺麗に印刷したければ600dpiがオススメ!
●カスレが気になる場合は、表面がザラザラした用紙は避ける

仕上がりが気になる方は、一度「試し刷り」でご確認ください~◎
WEBSHOPで販売中の「2色の混色見本カードセット」は、トーン(60線)も入ってますよ!

レトロ印刷は、リソグラフ(デジタル孔版印刷機)での印刷を専門とする印刷所です。『印刷のタネ』ではレトロ印刷の入稿のコツや使い方を、『JAMLAB』ではリソグラフやシルクスクリーンを使った実験や遊び方を紹介しています。

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