シルクスクリーン用のSURIMACCAインクは透明性のある通常カラーと不透明なKOTTERI(こってり)インクがあります。KOTTERIインクは通常カラーと比べ、表面がペタペタし、乾燥時間も通常カラーとは少し違います。
そんなKOTTERIインクをラボ!
通常の使用方法はこちらで紹介しています。
今回の実験
①いろいろな乾燥方法(アイロン、ドライヤー、自然乾燥)の実験
②いろいろなポリエステル生地に印刷
③ポリエステルTシャツに印刷
④まとめ
KOTTERIインクは通常カラーと比べ、少しクセがあります。各実験の最後にまとめがありますので、お急ぎの場合はそちらをチェック!
①いろいろな乾燥方法(アイロン、ドライヤー、自然乾燥)の実験
シルクスクリーンインクは種類によって乾燥方法や、乾燥時間が変わってきます。そして、印刷の作業場の環境により、乾燥時間は短くなったり、長くなったり。そうはいってもだいたいどのくらいなのだろう・・・乾燥実験の始りです!
シルクスクリーンではインクを乾燥させるために、アイロンを当てることでインクを乾燥させたり、ドライヤーの温風を当てることでインクを乾燥させたり、乾燥棚に印刷物を置き、自然乾燥をさせることがあります。
絵柄のサイズにもよりますが、アイロンを当てることで一番早く乾燥させることができます。
使用するデータ
ドライヤー、アイロン、自然乾燥用のデータを用意しました。
使用する生地の種類
SURIMACCAインクは綿などの天然素材やポリエステルに印刷することができます。今回は薄手のポリエステルと綿の生地に印刷します。
ポリステルはファイユという繊維が詰まった生地をチョイス
綿はトートバッグなどにも使われるシーチングの生地をチョイス
KOTTERIレッド、KOTTERIブルー、KOTTERIイエローの印刷
実験結果に差がなるべくでないように手際よく印刷!!印刷後、30分以内にドライヤーとアイロンがけをしていきます。
アイロン乾燥編 【120℃ 60秒】と【150℃ 60秒】の比較
アイロン【120℃を60秒】と【150℃を60秒】で乾燥!
綿の生地は150℃以上の高温でも大丈夫ですが、あまり当てすぎると生地やインクが焦げてしまう恐れがあるので、150℃をチョイス。ポリエステル生地は120℃を推奨しているものがあったので、120℃をチョイスしています。今回はアイロン温度150℃と、120℃の場合を比較!
120℃を60秒を当てた布
150℃を60秒を当てた布
アイロン乾燥後、1時間以内に洗濯へ!
通常は印刷後、すぐに洗濯はやめてください!インクを乾燥させたとしても、洗濯は数日経ってからしたいものですが、今回は実験なので乾燥後、1時間以内に洗濯してみます!
「洗濯のみ」を選択し、できあがりを待ちます。
アイロン編 【120℃ 60秒】と【150℃ 60秒】の結果!!
ぱっと見は変化なし!上段がポリエステル、下段が綿の生地です。
綿は洗濯中、生地にしわ(折り目)が入りやすく、しわが入った箇所に摩擦があたり、色が薄くなったところがありました。
ぱっと見、変化なし!上段がポリエステル、下段が綿の生地です。
アイロン150℃で60秒当てると、綿の方もしわが入ってもインク落ちがありませんでした。つまり、アイロンを60秒ほどあてる場合、120℃より、150℃の方が安心のようです!
生地によって、洗濯によって影響を受けそうですが、アイロンは150℃を60秒以上がおススメ!それでも洗濯は数日たってからするようにしましょう!
● アイロンは150℃を60秒以上
● 洗濯は完全に乾いたのち、数日たってから
ドライヤー乾燥編 60秒
アイロン編と同時にドライヤー編も実験します。ドライヤー乾燥も、アイロン乾燥と同じで、乾燥直後に洗濯するべきではありません…はたしてどうなるのでしょうか?
ドライヤー乾燥編 60秒の結果!!
KOTTERIレッドは大丈夫そうですが、KOTTERIブルーとイエローは洗濯前と洗濯後で変化があります。
洗濯後は生地のしわ部分のインクが薄くなっています。
KOTTERIイエローはほとんど同じ発色ですが、KOTTERIブルーは洗濯後、色が変わっています。
ポリエステルはしわが入りにくいため、しわによる色落ちはありませんでした。
KOTTERIブルーは綿の生地と同じように色が濃くなり、KOTTERIイエローは発色が薄くなっています。
ドライヤー乾燥編 60秒+自然乾燥 24時間の結果!!
KOTTERIレッド、イエローは問題なさそうですが、ブルーは色が少し変わっているところがあります。
ドライヤーで乾燥時間は短縮できますが、洗濯はやはり数日空ける必要がありそうです。
生地によって、洗濯によって影響を受けそうですが、ドライヤーを60秒以上し、手にインクが着かなくなっても、数日空けて洗濯するのがおススメ!
● ドライヤー乾燥で手につかなくなっても、洗濯すると落ちる場合があるので、洗濯は数日空ける
● KOTTERIカラーシリーズは乾いていない状態で洗濯すると色が変わる
自然乾燥編 いつになったら乾くの?
自然乾燥はどのくらい時間がかかるのでしょうか。
アイロン、ドライヤー編と同様に、ポリエステル生地と綿生地に印刷し、何日後に洗濯ができるようになるか探します。
探し方は簡単!インクを指で触って確かめます。通常、印刷部分はあまり強く触らないことをおススメします!
● 印刷から1時間後(初日 1⃣)に触ってみるともちろん乾いていません。
● 印刷から、24時間後(2日目 2⃣)まだ乾いていません。通常インク(ブラック)も試しに印刷していましたが、こちらは2⃣の時には乾いていました。
● 印刷から、48時間後(3日目 3⃣)乾いている気がしますが、洗濯をするときっとダメな気もします。ここは実験、洗濯してみましょう!
自然乾燥編 印刷から3日目(48時間)の洗濯結果!!
綿の生地は問題なしですが、ポリエステル生地のKOTTERIブルー、KOTTERIイエローは色の変化あり。ポリエステルはよりKOTTERIカラーシリーズの乾燥時間が必要なことがわかります。
自然乾燥編 印刷から4日目(72時間)の洗濯結果!!
ポリエステル生地のKOTTERIブルーは3日目より少し色鮮やかに。KOTTERIイエローは3日目より少し濃くなりました。
自然乾燥編 印刷から5日目(96時間)の洗濯結果!!
ポリエステル生地の一部薄くなっている箇所も見受けられますが、KOTTERIブルー、KOTTERIイエローとも大丈夫そうです!
生地によって、洗濯によって影響を受けそうですが、自然乾燥の場合は1週間以上空けて洗濯するのがおススメ!ポリエステル生地より、綿の方が定着が早い!
● 自然乾燥の場合、洗濯は1週間以上空ける必要がある
● ポリエステルに機能性がある場合、乾燥時間が変化する場合がある。定着具合を確認しよう!
実験② いろいろなポリエステル生地に印刷
SURIMACCAインクは綿などの天然素材やポリエステルに印刷が可能(ポリエステルも含む化学繊維の種類によっては密着しづらいものがあります)です。ポリエステルはさまざまな機能を付け加えることのできる合成繊維です。
主に石油などから作られるポリエステルは大まかに3種類(「ポリエチレンテレフタラート(PET)」、「ポリブチレンテレフタラート(PBT)」、「ポリエチレンナフタレート(PEN)」)に分類できます。
さらに!ポリエステル繊維の折り方や加工でさまざまな生地があります。
つまり、ポリエステルといってもたくさんある!定着するのもあれば、定着しないのもあるはず!いろいろなポリエステル生地に印刷して、どのような表現になるか実験します!
使用するデータ
使用するポリエステル100%生地
印刷・乾燥方法
KOTTERIカラーシリーズと通常カラーのSURIMACCAインクで印刷し、1時間以内にアイロン150℃で60秒ほど当て乾燥させました。アイロン後、1時間以内に洗濯へ!
洗濯後の結果!
せっかくなのでSURIMACCAインクの通常カラーも印刷してみました!
【ファイユ】
上段:KOTTERI/下段:通常カラー
特徴:洗濯前後に関係なく、繊維の折り方のためかムラがでやすい。
【サテン】
上段:KOTTERI/下段:通常カラー
特徴:SURIMACCAインクの通常カラーは生地にしみ込みやすく、KOTTERIカラーインクは表面に乗るような仕上がりになるのためか、KOTTERIカラーシリーズは薄くなっている箇所あり。
繊維にそって色落ちしている
【リネン風】
上段:KOTTERI/下段:通常カラー
特徴:生地がざらざらしているため、インクがにじみやすい
【吸汗速乾(ドライ)】
上段:KOTTERI/下段:通常カラー
特徴:通常の生地に比べ、メッシュ性があるためか、発色しづらい
【UVカット(ドライ機能付き)】
上段:KOTTERI/下段:通常カラー
特徴:生地の織り方のためか、色むらができやすい
【合皮】
今回のポリエステル生地はすべて100%を選択して印刷してみました。
ポリエステル生地でもいろいろな織り方、機能性があります。また同じような生地だとしても製造メーカーによっても仕様が異なってきます。
使用する前は定着するのか試し刷りすることをおススメします!
ポリエステル生地はいろいろな種類(機能)、織り方があるので、印刷後に定着具合を確認しましょう。
③ 吸汗速乾(ドライ)生地のポリエステルTシャツに印刷
①の実験ではポリエステル生地と綿生地にKOTTERIカラーシリーズを印刷し、アイロン、ドライヤー、自然乾燥によるインクの定着具合を確認しました。おススメはアイロン150℃で60秒以上を推奨します!
②の実験ではいろいろなポリエステルに印刷し、定着具合を確認しました。生地によって印刷の向き、不向きがありますが、ドライ生地はたびたびTシャツに使用されます。
ポリエステルのドライ生地はTシャツなどで大活躍している機能なので、印刷する機会があるはず!いろいろなドライ生地を比べていく実験にトライ!
使用するデータ
使用するTシャツ(ポリエステル100%・ネイビー)
左(「Unitied Athle 5900-01」)
4.1オンス ドライアスレチック Tシャツ
機能:DRY・吸水速乾/紫外線遮蔽
質感:メッシュ生地
右(Unitied Athle 5088-01)
4.7オンス ドライシルキータッチ Tシャツ
機能:極細繊維のマイクロファイバーを使用/DRY・吸水速乾/紫外線遮蔽
質感:柔らかく、さらさら
左(「glimmer 00300-ACT」)
4.4オンス ドライTシャツ
機能:DRY/UVカット
質感:メッシュ生地
右(glimmer 00350-AIT)
3.5オンス インターロックドライTシャツ
機能:DRY/UVカット
質感:柔らかく、さらさら
印刷・乾燥・洗濯
実験結果に差がなるべくでないように手際よく印刷!!印刷後、1時間以内にアイロンがけ(150℃ 60秒)をし、洗濯。しっかりアイロンをかけたので洗濯しても大丈夫でした。一部ポリエステル生地は120℃を推奨している生地があったので、その場合は120℃で60秒以上当てる必要があるかもしれません。
ドライ生地の発色の比較
実験前はさらさらしている生地の方が発色しないのでは?と予想していたのですが、それはあまり関係なく、今回の実験結果から予想すると、生地の厚み(オンス)が関係しているかもしれません。オンスの数字が大きくなるにつれ、インクの発色も強くなっています。
ドライ生地でも種類によって発色が異なる。ドライ生地はスポーツ・アウトドアTシャツなどで使用されることが多く、洗濯の回数も多くなるかもしれません。その場合は絵柄部分を裏返し、ネットに入れて洗濯することで長持ちさせることができます。
④まとめ
今回の実験ではKOTTERIカラーシリーズの乾燥、ポリエステル生地との相性、ドライTシャツの発色についてみていきました。
ポリエステル生地はいろいろな種類があるため、実際に印刷する際は試し刷りをおこない、定着具合を確認することが必要です。
今回の実験が、ご自身で何かをつくる際のヒントとなればうれしいです!
アイロンをあてると安心!
● KOTTERIカラーシリーズは乾燥が遅いので、アイロンで150℃で60秒以上あてよう!
● 生地によっては推奨温度があるので、生地に合わせてアイロンをあてよう!
● 洗濯するならアイロンをあてよう!
ポリエステルは種類が豊富なので要注意!
種類が多いので、試し刷り、定着具合を確認しよう!
ドライ生地でも発色が違う
洗濯をする場合は、絵柄を裏返し、ネットに入れて洗濯しよう!
SURIMACCAは、シルクスクリーンの製版サービスやオリジナルキットの開発のほか、シルクスクリーンの作業場を全国に拡げるプロジェクトを行っています。『JAMLAB』ではリソグラフやシルクスクリーンを使った実験や遊び方を紹介しています。
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