例えば名刺を作るとき、名前や電話番号など重要な情報は
渡す相手に読みやすいように作りたいですよね。
「黒インクであれば間違いないかな。
でも真っ黒だと硬すぎる気がするし、少し柔らかい雰囲気にしたいかも。
インクは黒のまま、濃度を少しだけ下げようかな。」
と、濃度を下げたデータでご入稿される場合があります。
黒文字部分を20%だけ下げてみることに。でも実はこれ、注意が必要なんです!
ちょっとしたことだけれど、注意することで仕上がりが変わります。
今回はそんな、小さな文字や細い線の濃度についてご紹介します。
リソグラフ(孔版印刷)の濃度調整とは
レトロ印刷が使用している印刷機「リソグラフ」の印刷手法は「孔版印刷」と言って、版に細かい穴をあけて、その穴から押し出したインクを紙にしみ込ませることで印刷しています。
印刷の濃度は版にあける穴の密度によって調整されます。
レトロ印刷のデータ(原稿)は黒色で作成していただきますが、
黒の濃度100%で作られた部分は版が完全に穴の開いている状態、黒の濃度50%で
作られた部分は、デザイン面積の半分に穴が開いている状態となります。
ドットの密度で濃淡を表現するので、印刷部分をよーく見てみると、濃度の薄い
部分はドット状になっています。(これを網点と呼んでいます。)
お花のイラストで朱色版を濃度調整して比較してみました。
100%で印刷をすると、朱色のインクそのまんまの100%濃度で印刷されます。
朱色のデータを50%にしてみると、100%の仕上がりと比較して薄くなっているのが分かるかと思います。
このお花のイラストの場合、朱色の面積が広いので濃度を下げても特に問題ありません。
細かい文字を濃度調整してみると
お花の朱色の濃度調整と同じように、名刺の文字部分を濃度調整してみます。
黒インクで100%のままのものと、黒インクのまま80%にしたもので刷り比べてみました。
左側の濃度100%のままの文字に比べて、右の80%にした文字はなんだか点線の
ような粗い仕上がりになっています。
たった20%下げただけでも、けっこう印象が変わるんです。
お花のイラストの場合は面積が広かったので網点になっても気にならないのです
が、細かい文字になると印刷面積が線のようにかなり狭くなるため、その狭い中
に網点が少ししか収まらず、なんだかかすれているような、コントラストの甘い
ような、ぼやけた文字になります。
せっかくの名刺が読みにくくなってしまうのは困りますよね。
いちばん深い発色の黒インクでもこうなってしまうので、
もっと明るいインクはさらに見えにくくなってしまうので要注意です。
いろいろな文字サイズで比べてみる
どれくらい細かくなると読みにくくなるのか、フォントサイズをアレコレ変えて印刷してみました。
上が黒インク100%、下が黒インク80%です。
細かくて見えにくいので、ズームアップしてみると…
80%で刷った文字のアップです。
よく見ると網点にはなっていますが、大きな文字であればあまり気になりません。
名刺で使うくらいの文字サイズになると、ガタガタしてきますね。
一番下はルビで使うくらいの3ptです。ほぼ潰れて読めません。
これは同じく濃度80%で、フォントを明朝系の細いものに変えたものです。
書体が細くなると、印刷面積もさらに狭くなるので、さらに粗い印象になりました。
さらに濃度を下げて、濃度50%で刷ってみると…
50%まで下げると、大きな文字でもかすれたような仕上がりになってしまいました。
小さな文字は、もうガタガタでちょっと怖い感じに。
名刺で使う文字をここまで下げてしまうのはちょっと厳しそうです。
濃度を下げずにインクの色を変えてみよう
粗い仕上がりになるのはイヤだけれど、少し薄くしたいというときは、
思い切ってインクの色自体を変えてみるのがオススメです。
例えば、インクを「黒」から「にびいろ」に変更してみましょう。
「にびいろ」は、濃いめの灰色インクです。
「にびいろ」はインク自体の色が黒よりも少し明るい色味なので、
濃度を下げずに100%のままでも黒より少し柔らかい印象に仕上がります。
実際に刷って比較してみました。
濃さはだいたい同じくらいだけど、100%で刷るからエッジが効いていてハッキリ読みやすくなりました。
同じように、「青」を「スカイ」に、「赤」を「もも」に、など同系色で色を変更することで、仕上がりイメージを保ちつつ読みやすく仕上げることができます。
他の部分で黒インクを使いたいなどインクの変更が難しい場合は、文字を大きくしたり、太めのフォントを使ったりと、印刷面積が少しでも大きくなるよう工夫していただくのもオススメです。
インクの色と濃度を駆使して、デザインと可読性どちらも満足な仕上がりを目指してみてくださいね!
レトロ印刷は、リソグラフ(デジタル孔版印刷機)での印刷を専門とする印刷所です。『印刷のタネ』ではレトロ印刷の入稿のコツや使い方を、『JAMLAB』ではリソグラフやシルクスクリーンを使った実験や遊び方を紹介しています。
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