なんでやねーん。自分で自分にツッコミをいれているようで少し恥ずかしいのですが、
「なんでレトロな印刷になるの?」って、気になる方は多いのではないでしょうか。

レトロ印刷、名前だけ聞くと、おじいちゃんの職人さんが少し薄暗い部屋で
年季の入った古い機械で、手の感覚だけを頼りに~~~っていうのを思い浮かべます。

実際のところは、最新のデジタルな機械で、
そこそこ若いスタッフが毎日元気に印刷しています。(がっかりしないでください)

さて、レトロ印刷のレトロたる特徴として
「ズレる」「かすれる」「にじむ」「色ムラがでる」「インクが落ちる」
ということが挙げられます。

じゃあ、なぜそんなことが起きるのか?
それを少しずつ、印刷のタネという場を借りてご説明しようと思います。

まず今回は「なんでズレんねん!」をお話しします。

レトロ印刷で使っているデジタル孔版印刷機「リソグラフ」。
版に小さな孔(あな)をあけ、そこからインクを出し、
紙に転写し印刷をするという仕組みになっています。

この版が、ズレの一番大きな原因になっています。

これがすごく薄いペラペラの紙のようなフィルムなんです。

ぺらぺら!
インクをだしたいところに孔をあけるので、ベタだとかなりの面積に孔があきます。
こんなペラペラのフィルムに たくさん孔をあけるとどうなるでしょう。

孔がたくさんあいていると、版が伸びやすくなるのです。
逆に孔が少ししかあいていないと、版は伸びにくいです。

それぞれ伸び方の違う2色の版を重ねて印刷すると、
どうしてもズレが出てしまいますね。

しかもこの版、インクの粘度だけでドラム(インクの出る筒)に巻きついているので
若干傾いたり、途中でしわがよったりするんです。

これがレトロ印刷のレトロな「ズレ」の原因です。

しかし、原因はこれだけではありません。

レトロ印刷のインクは半水性のエマルジョンインクというものを使用しております。
そのインクを吸い込みやすいように、扱っている紙も
クラフト系のザラザラした紙が多いのです。

その紙に印刷をすると、インクの水分を吸い紙が変形します。

表面がぽこぽこしている…!
印刷面積や濃度によって変形の程度は違います。
また、100枚印刷をしたとして、100枚全てが同じ変形の仕方をするわけでもありません。

この変形した紙の上から、ちょっと頼りない薄い版でさらに印刷を重ねると…

そらズレますわ~!
※わざとらしくズラしました。スタッフがこのままならない印刷を
 全力で見当合わせしています。

このズレた仕上りの印刷物が、昔の、版ズレをおこした粗い印刷の風合いを
表現することができるんです。

版ズレはランダムに起こるので、仕上がるまではどうなるか誰にも想像がつきません。
それがまた愛おしくて、レトロ印刷の魅力になっているのではないでしょうか。

また、あまりズラしたくない!というときは
出来る限り、濃度の高いベタを避けると、ズレが少なくて済むかもしれません。
また、ズレが目立ちやすいデザイン(細かい抜き合わせなど)はやめる、などなど…。

ズレをリスクととるか、味ととらえるかは
人によって、また印刷物の使われ方によってもかわりますね。
どうレトロ印刷と付き合うか、いろいろ考えてみると楽しいかもしれません!

レトロ印刷は、リソグラフ(デジタル孔版印刷機)での印刷を専門とする印刷所です。『印刷のタネ』ではレトロ印刷の入稿のコツや使い方を、『JAMLAB』ではリソグラフやシルクスクリーンを使った実験や遊び方を紹介しています。

レトロ印刷
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