レトロ印刷(リソグラフ印刷)はインクの特性上、印刷後もインクは完全に定着しません。そんなインクの色落ちを防いでくれるPP加工ですが、インクが定着しないがゆえにデザインによっては加工後のPPフィルム自体が剥離してしまうので、ご利用の前に以下の内容をよくご確認ください。
裁ち落とし部分に高濃度ベタがあると剥離しやすくなる
高濃度ベタと言っても条件は紙とインクによっても若干の誤差がありますが
全てのインクと紙で検証を行うのは情報が膨大になるので、比較のしやすい数パターンの組み合わせを用意したうえで検証を行いました。
特にPPフィルムの剥離の起こりやすいインク代表4色を10%刻みの濃度で印刷。
試し刷りと同様の各4枚を四辺を断裁後、端部を外から内へ撫でるのを繰り返し剥がれるかどうか確認してみました。
リスク別代表4色
- 通常インク(ラムネ)
- 色落ちのしやすいインク
金 / 蛍光色から(蛍光イエロー)/ パステル系から(コーラル)
検証結果
- 剥離リスクの高い濃度
全体を通して100-90%の高濃度ベタはリスクが高い結果となりました。 - 剥離リスクの高いインク
特に定着の悪いインクはコーラル。類似のパステルインク(アクア・シトロン・ミント)&白インクも同様の結果が予想されるため注意! - 剥離リスクの高い用紙
特に定着の悪い用紙はチャイ・モダンクラフト。インクとの組み合わせにもよりますが、印字端までベタを使用する場合は50%以下に設定するのが安全です。
△強く擦ると剥がれる ×とても剥がれやすい
また、穴あけなどの加工も同様に加工位置に高濃度ベタがあるとPPが浮いてくる可能性があります。
デザイン別での検証
裁ち落とし部分まで高濃度ベタがある場合は端めくれリスクありと分かりましたが、どんなデザインならリスクが少ないのでしょうか?デザイン別で検証してみました。
- 用紙
剥離リスクの少ない(クーヘン) / 剥離リスクの高い(モダンクラフト) - インク
剥離リスクの少ない(黒) / 剥離リスクの高いパステルインク(ミント)
ベタ部分は濃度100%ですが、フチありデザインは裁ち落とし部分に印字が無いのでリスク無し◎ ただし、レトロ印刷では印刷特性上ランダムなズレが生じる為、枠やフチ付の断裁は四辺がすべて均等な幅に仕上りませんのでご了承ください。
気になる場合はフチを多めに設けるとズレが目立ちにくいですよ!
【タネ】枠のデザインにご注意!https://jam-p.com/blog/waku/
線など印字面積の少ないデザインなら裁ち切り部分にデザインがあってもリスク無し◎
広範囲でなくとも、一部分でもベタがある場合は注意!
クーヘン・黒インクでは問題ありませんでしたが、モダンクラフト×ミントは剥がれてしまいました。用紙やインクの組み合わせによってはリスクありです⚠
濃度100% 太さ2ptの罫線で総柄。
総合的な印字面積は多いですが、ベタじゃないので問題ありませんでした◎
黒・ミント共に濃度50%ベタの混色。
50+50=100%なのでは⁉と単純発想で試してみましたが、そんなことはありませんでした…。1色での薄ベタよりは濃く仕上がりますが、どちらも捲れませんでした◎
ただし、濃度が高くなるにつれリスクも高まりますので、混色仕上げの場合も濃度調整に気を付けて!
仕上がりが不安な場合はPP加工を含めた試し刷りも出来ますのでご活用下さい。
【試し刷り】https://retroinsatsu.com/order/tameshi/
まとめ
- PP加工は端まで高濃度ベタがあると剥がれるリスクがある
用紙やインクの組み合わせにもよるが100-90%濃度は避けた方が良い - インクではパステル&白インクは特に定着がしづらい
- 用紙ではチャイ&モダンクラフトは特に定着がしづらい
- 穴あけ、角丸などオプション加工位置に高濃度ベタがある場合も同様のリスクあり
- 端にベタデザインがない場合は剥離リスクは少ない
インク・用紙の組み合わせによって仕上がりに変動があります。
全く同様の仕上りとはならない場合がありますので、あくまでも参考としてご覧ください。
レトロ印刷は、リソグラフ(デジタル孔版印刷機)での印刷を専門とする印刷所です。『印刷のタネ』ではレトロ印刷の入稿のコツや使い方を、『JAMLAB』ではリソグラフやシルクスクリーンを使った実験や遊び方を紹介しています。
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