レトロ印刷は一般的なフルカラー印刷とは違い、
ズレる・かすれる・色移りするなど色々な特性がありますが、
その中のひとつに「インクにじみ」があります。
レトロ印刷は半水性インクを版から紙に転写して染み込ませて印刷するという手法(孔版印刷)を使っています。
そのため、紙に染み込ませる際にインクが多少にじみ、元データ(原稿)と比べると少し太った仕上がりとなります。
小さい文字は潰れて読みにくくなることも
例えば、チラシに記載した地図部分。どうしても文字が小さくなりがちです。
でも、お店の名前や駅、道路に川など、目印になるものはちゃんと読めるように仕上げたいですよね。
大きな文字や広範囲のデザインでしたらほとんど気になりませんが、
名刺や地図などで使われるような細かい文字は、にじんで太ると潰れやすく、
読みにくい仕上がりとなる可能性があるため注意が必要です。
実際にフォントの種類を変えて刷り比べてみました。
地図内の「豊崎神社」という文字部分に注目して見てみると、
細いフォントを使ったほうは読めますが、太いフォントのほうは画数の多い文字が潰れてしまっています。
レトロ印刷では潰れ回避のため、使用する文字サイズは5pt以上を推奨していますが、フォントの種類や文字の画数によっては潰れてしまう場合がありますので注意してください。
白抜き文字は特に潰れやすい
特にベタの中にある白抜き文字は、インクがにじむことにより白抜き部分が狭くなり潰れやすくなります。
地図内の「城北公園通」という白抜き文字部分に注目してみると、細いフォントのほうはデータでは見えていても、刷ってみると潰れてほとんど読めなくなってしまいました。
明朝体など部分的に細い部分のあるフォントは、横線部分だけ潰れてしまうなど文字が欠けたような仕上がりとなることもあります。
白抜き文字を使うときは、なるべく文字を大きく・太くすることをオススメします。
フォントは様々なので、どこからが潰れるとはなかなか詳しくご案内できませんが、印刷見本「あそびかたろぐ」に入っている「紙とインクの見本帖」(カラーチャート)の上部に罫線の印刷サンプルを掲載していますので、その細さを参考に作成すると便利です。
インクの色味でも見え方が変わるので、例えば黄インクなど明るい発色のインクでの白抜きは特に見えにくくなります。
実際のデータ(原稿)・紙・インクを使って、本注文前に「試し刷り」で確認しておくと安心です。
ちなみに、白抜き文字を作成する場合、ベタをパスファインダーなどで白く切り抜かなくても大丈夫です。
レトロ印刷はデータの黒色(灰色)部分が印刷されるため、白い状態であればその部分は印刷されません。
黒ベタの上に白い文字を乗せておくだけでOKです。
ベタに白抜きでなく、白インクを重ねてみると
白抜きにすると潰れてしまうから、ベタの上に白インクで文字を乗せよう!という方法も考えられますが、インクが半水性のため、他のインクと重なるとインク同士が混色してしまいます。
ベタの色と白インクが混色した場合、白インクは明るい発色のインクのため、他のインクに負けてしまい、薄い仕上がりとなってしまいます。
読みにくくなる可能性が高いため、白抜きにして紙の色で文字を見せた方がハッキリ読むことができそうです。
ベタ部分の濃度を下げてみると
白抜き文字の背景にあたるベタ部分の濃度を薄くする場合も注意が必要です。
ベタ部分の濃度を下げると、印刷が網点になります。(【タネ】細かい文字は濃度に注意 参照)
よく見るとドットの集合体のようになるため、そこに細かい白抜き文字が重なると、背景の粗さと相まって文字がかなり粗い仕上がりになってしまいます。
濃度80%であってもかなり粗い印象ですので、白抜きの背景濃度は要注意です。
同じ濃度でも、文字を大きくしたり太くしたりと、白い面積をなるべく大きくすることで、可読性が高まります。
どうしても濃度を下げなければいけな場合は、文字の太さ・大きさを調整してみてください。
このように、インクが「にじむ」という特性により細かい文字の仕上がりには注意が必要です。
特に白抜き文字を使うときは「にじみ」による潰れを意識して、なるべく背景は濃度を濃く!文字は大きく太く!を心がけて、原稿作成してみてくださいね。
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レトロ印刷は、リソグラフ(デジタル孔版印刷機)での印刷を専門とする印刷所です。『印刷のタネ』ではレトロ印刷の入稿のコツや使い方を、『JAMLAB』ではリソグラフやシルクスクリーンを使った実験や遊び方を紹介しています。
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