JAMのシルクスクリーンサービスをご利用頂くにあたって寄せられる質問に、
「写真などのフルカラーの原稿で製版、印刷できますか」というものが多くございます。
こちらは過去のJAMLABの記事でも取り上げている通り、
フルカラーのデータをシアン(C)/マゼンタ(M)/イエロー(Y)/ブラック(K)の4色に分解し、それぞれ製版した上で1色ずつ重ねて疑似フルカラーを再現する手法をご紹介しました。

そしてもう一つ「ガラスやアクリル板などツルツルしたものに印刷はできますか」という質問も多々寄せられます。

こちらも過去のJAMLABで取り上げたことがございます。

上記の記事内容の通り、SURIMACCAインクは生地に吸い込ませて定着させる水性インクなので、布や紙以外の材質の中には印刷はできても後から摩擦等で剥げてしまうものもございます。

今回の記事では、役立つ上記2つの記事をまた読んで頂いたり、最近SURIMACCAに出会った方々に知って頂きたかったという意図もありつつ、

これら2案を合わせた「アクリル板に写真は印刷できるのか」という実験をしてみたいと思います!
皆さまのモノづくりのヒントになりましたら幸いです◎

データ作成

今回使用する写真はこちら。

まずは、写真印刷の記事に倣って、フルカラーの写真を4色分解していきます。
Photoshopにて4色分解後、ハーフスクリーントーンに変換。
今回は滲み潰れが心配なので線数を少し粗めの「30」に設定。
詳しい作成方法は上記リンクから記事をご参照ください!

印刷素材は参考記事と同じくアクリルのフォトフレーム。
記事内容同様に2枚のアクリル板で挟むタイプのものを使用し、摩擦で剥がれ落ちないよう2枚の内側に印刷していきます。

印刷

まずはイエローから。
SURIMACCAインクではイエローを使用。
もちろんインクのチョイス次第で仕上がりの風合いも変わりますが、今回はCMYKに近い色味で印刷を進めていきます。

写真データが長方形なので、フォトフレームの形状に合わせ垂直平行を取る作業も必要になります。
今回は省略しましたが、印刷しない反対側の面にマスキングテープを使って印刷位置を決めるとあたりが付けやすいかもしれません。

アクリル板は失敗しても拭き取ればリセットできるという安心感の元、いざ1色目。

写真では確認しづらいですが、思った以上に滲み潰れもなく割と綺麗に印刷できました。
もちろんこの段階では仕上りなんて予想できませんよね。

次にマゼンタ。SURIMACCAインクではネオンピンクを使用。
もうここから重ね刷りになるため失敗は許されません。(失敗すればイエローから刷り直しなので涙)

大きなズレもなく印刷できました。

紙と比べるとやはり少しにじみ潰れがあるように見えますね。(写真右)
加えて発色もぼんやりする印象。

毎回4色分解の重ね刷りをする度にイエロー、マゼンタの段階で「これ本当に綺麗な写真に仕上がるの…?」と不安な気持ちになるのはあるあるなので安心してください。

続いてシアン。SURIMACCAインクではブルーを使用。

一気に写真っぽくなりました!
やはり紙の方がドットそれぞれの輪郭はくっきりしていますね。
それでも元の写真から遠くはない色味になってきました。

そして同時に「もうここで完成でよくない…?」という気持ちも沸き上がりつつ、
仕上げのブラックももちろん印刷していきます。

ラストのブラック。SURIMACCAインクではもちろんそのままブラックのインクを使用。
このブラックのインクの滲み潰れや落ちる量次第で刷上りは大きく左右されます。
この写真の中の穏やかで優しい花と空の景色がひとたび、ダークサイドに染まりかねません。
いざ緊張のブラック!

いい感じに仕上がったのではないでしょうか!

もちろん、ドットの集合の重ね刷り、しかも手刷りによるものなので拡大してみると粗が目立ちますが、紙に刷ったものとそこまで遜色ない仕上がりになりましたね。

まとめ

今回の実験で4色分解した細かなドットの印刷がアクリル板にも可能なことは実証できましたが、この記事で伝えたいことはこれだけではありません。
このアクリル板をフォトフレームに組み立てて、立ち上げてみましょう。

そうです。写真の雲の部分がスッポリ抜けてしまっています。
対して紙に印刷した方は雲の部分を紙の地の白色が補ってくれているのです。
つまり、元のフルカラー写真の白い部分にはインクが落ちないということになります。

そして、これはアクリル板でなくても白色以外の素材に印刷する場合に多く起こり得る現象ですので、自分が作りたい素材の地の色に合わせて原稿作りに注意が必要となります。

特に白飛びした人の顔や抜き文字、景色などはここに注意しないと大幅に仕上りが元の写真から遠ざかります!
(ナチュラル地に3色目のブルーを刷った瞬間気付いた、という経験があります…)

もちろん元のデータに白色部分がない場合や、白色の版も作り下に敷くという方法などもございますので、複雑な印刷やデータ作りに不安がある場合は、過去のJAMLABの記事を参考にしたり、JAMのスタッフに気軽にご相談下さい◎

おまけ

ちなみにこのフォトフレームを後ろから見るとイエローが目立ちますね…!
刷る順番にもご注意を!

今回使用した物

SURIMACCAインク(イエロー)
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SURIMACCAインク(ネオンピンク)
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SURIMACCAインク(ブルー)
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SURIMACCAインク(ブラック)
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その他参考記事

SURIMACCAは、シルクスクリーンの製版サービスやオリジナルキットの開発のほか、シルクスクリーンの作業場を全国に拡げるプロジェクトを行っています。『JAMLAB』ではリソグラフやシルクスクリーンを使った実験や遊び方を紹介しています。

SURIMACCA
https://surimacca.com/
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